
トレド通りの裏側にあるスペイン地区(Quartieri Spagnoli)には、ナポリの市民のリアルな生活が垣間見れる特徴的なエリアです。
このゾーンは下町ならではのナポリ市民の熱気と活力で溢れています。
スペイン地区の歴史
スペイン領属時代
16世紀後半に当時ナポリを統治していたスペインはナポリ市民の暴動を抑えるため、スペイン軍兵士をナポリに滞在させます。その兵士たちの一時的な宿営地としてここスペイン地区はつくられました。
しかし、実際には娯楽を求めるスペイン兵士と貧しさからやむを得ず自らを売るナポリの市民たちとの売春が頻繁に行われたり、狭く入り組んだ道を利用してギャングによる暴行、窃盗が多発するなど、ナポリの暗い影の面をつくりあげることとなります。
現在の様子
長い間ネガティブなイメージが拭えなかったスペイン地区ですが、近年ではナポリ市の努力もあり、あらためてその評価が見直されています。建物との間につるされる無数の洗濯物、何代にもわたる革製品の工房、ナポリの伝統料理が食べられ多くのひとでにぎわう食堂的トラットリアなどから、昔から続くナポリ市民のエネルギーを感じ取ることができます。
夜遅い時間帯を避ければ、他の場所と同じように観光できるので一度は訪れ、ナポリの歴史を感じていただきたい地区です。


"ムラレス" スペイン地区の壁アート

スペイン地区にある細い路地を登っていくと、唐突に開けたスペースが現れます。そこに広がるのは地元アーティストを中心として描かれた素晴らしい壁アートの数々!
"ムラレス(Murales)"と呼ばれるその壁アートには、マラドーナをはじめとするナポリのサッカーを語る上で欠かせない選手たちを描いたものや、ナポリを代表するピーノダニエレやルーチョ・ダッラ(実際にはボローニャ出身ですがナポリをこよなく愛していました)などの音楽家、俳優たちなどを描いたものがあり、そこにはナポリという街の歴史がギュッと詰まったどこか神聖な空気が漂います。
ガイドブックにはほとんど紹介されることはないマニアックな場所なのですが、ナポリのサッカーファンやナポリのストリートアートが好きな方、ナポリの熱い下町の空気感が好きな方、とりあえずナポリが好きな方は必見です!


ナポリのサッカー選手たち
ムラレスの中でまず目に飛び込んでくるのはナポリの英雄・マラドーナの壁画です。もともとマラドーナがナポリをセリエA優勝に導いたことを称えて1990年にスペイン地区に住むマルコ・フィラレディ(Marco Filardi)によって描かれたものでした。
時代が流れ、壁画もだんだんと色褪せていきましたが、2016年サルヴァトーレ・ロディチェ(Salvatore Iodice)によって修復、さらに翌年アルゼンチンアーティスト、フランシスコ・ボソレッティ(Francisco Bosoletti)によって顔部分がよりリアルに描きなおされました。また、マラドーナの壁画の向かいに描かれたベールを着た女性の壁画もボソレッティの作品で、偉大な彫刻家であったアントニオ・カノーヴァへのオマージュとして、サンセヴェーロ礼拝堂にあるLa Pudiciziaが描かれました。


他にもナポリのキャプテンとしてチーム最多の520試合に出場、マラドーナを超える121ゴールを記録したハムシーク(Marek Hamsik)や、そのハムシークの最多ゴール記録を塗り替えたメルテンス(Dries Mertens)もあり、ナポリサッカーファンならたまらない場所です。
メルテンスの壁画が描かれた際にはメルテンス本人が訪れ、スペイン地区の住人たちに大歓声で向かい入れられる中、自らのサインを残していきました。こうした国を超えた強い繋がりも、サッカーに熱いナポリならではのものですね。


Quartieri Spagnoli, Murales
住所: Via Emanuele de Deo, 62, 80132 Napoli NA
最寄り駅: トレド駅(Toledo, linea1)から徒歩約10-15分
営業時間: 暗くならないうちに
定休日: なし
料金: 無料