ナポリを訪れた方なら必ず目にするであろう、赤いコルノ。サングレゴリオ・アルメーノ通りの工房にはズラッとこのコルノが並んでいます。
一見すると、その色や形状から「とうがらしかな?」と思ってしまいますが、実はとうがらしではなく、ナポリでは幸運を呼ぶ魔よけアイテムとして知られています。
コルノの歴史
「コルノ」とはイタリア語で「角」という意味です。
大昔から動物の角は力のシンボルとして信じられていて、狩りで捕らえた動物の角をほら穴の入口に飾り、自身の力を示していたといいます。その角の長さや大きさが大きいほど力の誇示となりました。
ギリシャ神話のコルノ
ギリシャ神話の中でコルノは力の象徴としてたびたび登場します。有名なのはゼウスがアマルテアに与えたとされる羊の角の話です。
絶対的な力を持つとされるゼウスは洞窟の中で生まれ、アマルテアによって育てられました。アマルテアの持つ山羊の乳によって育てられたゼウスは、のちにその感謝の気持ちを表すため、アマルテアに羊の角をプレゼントします。この角はコルヌコピアと呼ばれ、望むもの全てを与える力があったといいます。
ローマ時代のコルノ
人々のコルノへの概念は古代ローマ時代に入ると変化し、男性器のシンボルとして捉えられるようになります。
羊飼いで、庭園と果樹園の神、プリアポスは巨大な男性器とともに描かれ、不運や災いを遠ざける生殖力の神とされていました。
古代ローマ時代のナポリではこのプリアポスの男性器をモチーフとしたコルノが作られるようになり、子孫の繁栄を守るアイテムとして広がります。また、エジプト神話にでてくる豊穣の女神・イシスへの捧げものとしてもつかわれていたようです。
こうしたプリアポスにまつわる物品は、ポンペイ遺跡やエルコラーノ遺跡からいくつも発掘されています。
現在のコルノ
現在のナポリで見られるコルノもプリアポスの男性器が起源となっています。
昔のような「子孫の繁栄」といった意味は薄れてきていて、シンプルに幸運を呼ぶラッキーアイテム、お守りといったニュアンスが強いです。
ナポリのコルノの特徴
サングレゴリオ・アルメーノ通りをはじめとして、ナポリの至る所で目にするコルノですが、ナポリのコルノと呼ばれるにはいくつか特徴があるんです!
1. 色
コルノの色は基本的に赤でなければいけないとされます。赤は血の色、生命力の象徴であり、生きる力を与えるとされるからです。
今ではナポリのイメージカラーにちなんだ水色のコルノや、何でも吸収する強力なパワーを持つ黒色のコルノも見られますが、オリジナルカラーは赤に間違いありません。
2. 手作業
コルノは必ず手作業でつくられたものでなければなりません。これは職人がひとつひとつ作るごとにその人のエネルギーがコルノに移るとされるため。
小さなコルノでも職人が手作りしているものがほとんどなんです!なのでよく見ると全て同じ形ではなくて、微妙に長さが違ったり形がいびつだったりするのもあるのです。
3. 贈りもの、贈られるもの
一番の特徴といってもいいのが、コルノは「贈りもの」であるということです。自分で自分のために買ってはその効果はないといわれていて、誰かに贈られてはじめて、その効果を発揮します。
上記したように、もともとは捧げものとしてつかわれていたこともあり、今でもその風習が残っているというわけです。
おみやげにぴったり!
サングレゴリオアルメーノ通りには店先にたくさんの種類のコルノが並び、ナポリのおみやげの定番アイテムとなっています。「誰かに贈られないと効果がない」という性質からもおみやげにぴったりですよね!