乾燥パスタの産地 カンパニア州
ナポリのあるカンパニア州は17世紀ごろ、乾燥パスタの産地として発展しました。カンパニア州でとれる良質な硬質小麦と、高温低湿の気候は乾燥パスタの生産にぴったりだったのです。特にグラニャーノはパスタ作りに最適な場所で、「グラニャーノのパスタ」といえばIGP(保護指定地域表示)にも指定されています。
また、当時のナポリを治めていたブルボン家両シチリア王フェルディナンド1世が庶民の食べ物であったパスタに興味を持ったのも、カンパニア州がパスタの産地となるのに大きく貢献しました。
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ナポレターノのこだわり
毎日パスタを食べるナポレターノは、パスタの種類はもちろんのこと、パスタのブランドにもそれぞれこだわりを持っています。特に友だちを家に招いて食事する際は、普段使いのパスタではなく、カンパニア州でつくられたワンランク上のパスタをつかったりします。
イタリアのスーパーのパスタコーナーにはズラッとパスタが並んでいて、経済的なパスタ(一袋30セントくらい)から、アルティジャナーレ(職人の手による高質のもの)のものまでたくさんのパスタブランドが並びます。
そんな中からナポレターノに人気のカンパニア州に拠点を置くパスタブランドを5つご紹介します!
1. Di Martino (ディ・マルティーノ)
かわいらしいパッケージが印象的な大人気パスタブランド、Di Martino(ディ・マルティーノ)。
1912年創業のディ・マルティーノは、100年以上に渡ってパスタの名産地グラニャーノに工場を構え、乾燥パスタを中心に生産しているカンパニア州を代表するパスタブランドです。
僕が初めてナポリでフレッシュのミニトマトを使ったペンネ(Penne al pomodoro fresco)を食べたのはこのディ・マルティーノ社のペンネ・リッシェ(Penne Lisce)という筋の入っていないツルツルのペンネを使ったものでした。その歯触りの良さと弾力に感動したのを覚えています。
以前からパスタの品質には定評のあったディ・マルティーノですが、現在は3代目のGiuseppe di Martino(ジュセッペ・ディ・マルティーノ)によってかわいらしい箱に入ったパスタや、あのドルチェ・ガッバーナとコラボしたエプロンを売り出したり、専門のショップを出店するなど、売り出し方もとても上手なパスタブランドです。
2. Garofalo (ガローファロ)
数あるグラニャーノのパスタ工場の中でも、一番歴史のあるパスタブランドともいえるのがGarofalo(ガローファロ)です。
ガローファロの歴史は古く、1789年にまで遡ります。まさに両シチリア王国としてフェルディナンド1世が統治していた頃、パスタに適した土地として認知されたグラニャーノには多くのパスタ工場が建てられました。
その内のひとつであったガローファロは丁寧に良質なパスタをつくること掲げ、時代の変化にうまく対応してきたパスタ業界のパイオニア的存在です。最近ではナポリのサッカーチームのスポンサーとしてユニフォームにもロゴが入っていたりします。
ガローファロのパスタは大量生産されたパスタとは思えないほどで、ひとつひとつのパスタが微妙に形が均一でいなかったりするところも、好きなポイントです。タンパク質含有率も14%と申し分なく、乾燥パスタならではの歯ごたえと食感を存分に楽しませてくれます。
3. Voiello (ヴォイエッロ)
ナポリのパスタブランドとして日本でも扱っているところもあるVoiello(ヴォイエッロ)。
ヴォイエッロは1879年に創業したパスタメーカーですが、そのストーリーはとても興味深いものです。1839年イタリアで初めて鉄道が開通したのは、実はナポリーポルティチ間なのですが、その工事に携わっていたのが、スイス人のAugust Vanvittel(アウグストゥ・ヴァンヴィッテル)です。
彼はナポリ周辺でパスタ工場を営む家族の娘と結婚し、その後のイタリア統一を経て、Vanvittelという名字はVoiello(Vojello)とイタリア風に変えられました。こうして機密なスイス人とナポリ人の間でVoielloというパスタブランドはナポリを中心に発展していきます。第二次世界大戦後、有名パスタメーカー・バリラのグループとなり、現在はカゼルタに工場を構えています。
ヴォイエッロのパスタは表面がザラッとしていて、モチッとした食感が特徴で、トマトソースやラグーソースなどとの相性は抜群!しっかりソースとからまってくれます。パッケージに描かれたプルチネッラもかわいいです。
4. Rummo (ルンモ)
パスタといえばグラニャーノだったり、トッレアンヌンツィアータなどが有名ですが、Rummo(ルンモ)はカンパニア州のべネベントにあるパスタブランドです。
1846年に創業したルンモ。当時飼っていた3頭の馬(Bruto, Bello, Baiardo)によってプーリア州やカンパニア州からべネベントのパスタ工房へと小麦が運ばれていました。この3頭の馬はルンモのシンボルマークとして、パスタのパッケージにもプリントされています。
イタリア全土でも評価の高いルンモのパスタですが、個人的にもイタリアのスーパーで見つけられるパスタで一番好きなのはルンモのパスタです!
プロテイン含有量が14.5%ととても高く(大体の美味しいパスタでも14%)、茹でている時にボイルオーバーしない、アルデンテの状態が長いといったイメージです。どのパスタも美味しいですが、ルンモのちょっと大きめのショートパスタがたまらなく好きです。パッケリやフジロッティ、ボンバルディーニといったゆるやかなカーブをしたやわらかな形が印象的で、心地よい噛み応えが素晴らしいです。
残念ながら、Amazonや楽天ではグルテンフリーのものしか見つかりませんでした。
5. Setaro (セタロ)
ここまで4つのパスタブランドを紹介してきましたが、最後のSetaro(セタロ)はさらにその上をいく高級パスタです。
1939年創業、ヴェズヴィオ火山のふもとのトッレアンヌンツィアータにあるセタロは、今も尚、パスタ職人による手作業と創業当時の機械でつくられています。最高品質の硬質小麦、自然の湧き水、昔ながらの銅製の機械を通して形をつくられたパスタは低温でゆっくりと乾燥されます。
伝統的な製法を守られてつくられたパスタは、最新のステンレスの機械では得られない表面のザラつきがみられたり、パスタの切り口が直線的でなかったり、独特の質感とフォルムを生み出します。
袋詰めや刻印もひとつひとつ手作業で丁寧に仕上げられたパスタは、工場で大量生産されたパスタとは比べ物にならないほどで、同じパスタソースをつかっても全く違う一皿に仕上がります。
優秀なカンパニア州のパスタ
ご紹介したように、カンパニア州にはこんなにもたくさん美味しいパスタメーカーが存在しています!しかも今の時代、日本にいながらネットでその味を気軽に楽しめることができるというのはうれしい限りです。ご自宅でちょっと贅沢なパスタをワイン片手に作ってみてはいかがでしょうか?
また、イタリアに旅行の際、パスタはお土産にもオススメです!日本には限られた種類しか入っていないので、レアな種類のパスタにもきっと出会えるはずです。