【カゼルタ宮殿】世界遺産にも登録されている美しい宮殿の見どころを徹底解説!

世界遺産が一番多い国として知られる国、イタリア。
ナポリのあるカンパニア州も実に5つの世界遺産を擁しています。そのうちのひとつである、カゼルタという街にあるカゼルタ宮殿。今回はそんな美しい宮殿と庭園が魅力のカゼルタ宮殿についてご紹介します。
カゼルタ宮殿とは

カゼルタ宮殿は18世紀後半から19世紀前半にかけて、スペインブルボン朝のカルロ3世(Carlo di Borbone)の命によって建てられました。
当時ナポリを治めていたカルロ3世はナポリに王宮を持っていましたが、海からの攻撃を避けるために、ナポリからさほど遠くない内陸地であるカゼルタに新たな王宮を建てること望みました。
カルロ自身は1759年にスペイン王に就くためスペインへと渡り、実際に宮殿として住み始められたのは息子の両シチリア王フェルディナンド1世の代になってからでした。
建築家ヴァンヴィテッリ

宮殿の設計を任されたのは、ナポリを代表する建築家の一人であるルイジ・ヴァンヴィテッリ(Luigi Vanvitelli)です。
ナポリ出身の建築家だった彼は、18世紀最高の建築家と名高いシチリア人建築家フィリッポ・ユヴァラ(Filippo Juvarra)にもその才能を認められるほどでした。また、友人でローマの建築家ニコラ・サルヴィ(Nicola Salvi)とともに、トレビ泉の制作やサン・ピエトロ大聖堂の修復などにも携わりました。ナポリの街にも、ダンテ広場や重要な建物など彼の作品が今も尚、数多く残されています。
そんな彼が手掛けた建築物で一番の功績がこのカゼルタ宮殿。1752年にカルロ3世の命を受け、設計を始めたヴァンヴィテッリが目指したのはヴェルサイユ宮殿でした。華やかなバロック後期の様式でつくられた宮殿は美しく、庭園はヴェルサイユ宮殿のものに勝るとも評されます。
ルイジ・ヴァンヴィテッリは1773年に亡くなり、その後息子のカルロ・ヴァンヴィテッリなどにより宮殿の工事は引き継がれました。
カゼルタ宮殿の見どころ
カゼルタ宮殿の見どころは大きく分けて2つ。
宮殿の王宮(Palazzo Reale)と美しい庭園(Parco Reale)です。ナポリ王が住んでいた部屋はどれも素晴らしい装飾で美しく、広大な庭園も見応えがあります。そんな王宮と庭園の見どころをご紹介します。
カンノッキアーレ(Cannocchiale)

宮殿の入口から中に入ると、カンノッキアーレ(Cannocchiale)と呼ばれる柱で囲まれた空間にでます。
カンノッキアーレとはイタリア語で「望遠鏡」という意味で、そこから見える庭園の一直線に伸びる水道がまさに望遠鏡で覗いているような感覚になることから、この名前が付きました。ここには3つの身廊があり、中央の身廊は馬車が、両脇の身廊は歩行者用として分けられていました。
宮廷劇場(Teatrino di Corte)

劇好きで知られるカルロ3世の希望でつくられたのが宮廷劇場(Teatrino di Corte)です。
当初、ヴァンヴィテッリは王に宮殿と隣接した公の劇場を提案しましたが、カルロ王は王族専用の小さな劇場を王宮内部につくることを要望されました。大きな劇場もいいですが、こうした小さく美しいプライベートな劇場も素敵な雰囲気が漂います。
劇場の建設は10年かかり、唯一ヴァンヴィテッリ存命中に仕上がった建物となります。天井にはクレシェンツォ・ガンバ(Crescenzo Gamba)によるフレスコ画「ヘビを踏みつけるアポロ」が見られます。
王の階段(Scalone Reale)

この王宮の素晴らしい建造物のひとつが、表敬の階段(Scalone d'onore)ともいわれる上階へとあがる王の階段(Scalone Reale)です。こんな豪華で迫力のある階段はなかなか見ることができません!
美しい色合いとどっしりとした重みのある大理石でできた階段は、手すりや柱、壁などの細部まで装飾が施され、うっとりと見入ってしまいます。
天井部分は2重構成となっていて、画家ジローラモ(Girolamo Starace-Franchis)による、「四季」を表した作品と中央の「アポロの宮殿」が見られます。実はこの2つの天井の間には外から見えないようなスペースがあり、王の帰還の際にはオーケストラが配置され、生演奏で迎い入れたとのことです。こんな素敵なアイデアもさすがヴァンヴィテッリですよね。
ここの階段は映画「スターウォーズ」シリーズのエピソード1、2の中に出てくるアミダラ女王の宮殿としての撮影でもつかわれたことで知られています。
パラティン礼拝堂(Cappella palatina)

上階に上がるとすぐにパラティン礼拝堂(Cappella palatina)が見えます。
この礼拝堂もベルサイユ宮殿の王室礼拝堂を参考にしてつくられましたが、王宮から直接入ることができるように、王宮内部に礼拝堂を建てるという点では異なります。礼拝堂は1943年、アメリカ軍からの空爆の被害を受け、今でも一部の柱などにその跡が残ります。
玉座の間、王の部屋(Apportamenti Reali)

王宮の大きさは約48,000平方メートル、1200もの部屋数を誇るカゼルタ宮殿の一部を見学することができます。
王宮の正面部分には豪華な王の部屋がずらっと並んでいます。輝かしい金色で飾られた最も重要な玉座の間(Sala del Trono)、正義の女神アストレアの名を持つ、迷路状の床が美しいアストレアの間(Sala di Astrea)、宮殿のちょうど中心部分にあたり、カルロ3世が憧れていたとされるアレクサンドロス3世の名をとったアレッサンドロの間(Sala di Alessandro)、四季を表現した天井が素敵な四季の間(Sala delle Stagioni)など見どころたくさん。
他にも、両シチリア王フェルディナンド1世が書き物や思考にふける際につかっていた書斎(Studiolo di Ferdinando IV)や、その妻マリア・カロリーナのプライベートな空間であるブドワール(Boudoir di Maria Carolina)、14,000もの書物を所蔵するパラティン図書館(Biblioteca Palatina)なども必見です。


王の庭園(Parco Reale)

もちろん王宮内も見応えがありますが、カゼルタ宮殿の見どころといえば100ヘクタールにも及ぶ広大で美しい王の庭園(Parco Reale)です。
庭園はイタリア様式で、左右ほぼ対称の庭には緑の芝生が広がり、庭園内には整備された木々が生い茂る森(Bosco Vecchio)、魚の養殖所(Pescheria)、小さな憩いの空間だったカステッルッチャ(Castelluccia)なども見られます。
ヴァンヴィテッリが設計した全長38kmという、カロリーノの水道橋(こちらも世界遺産に登録されています)を通して運ばれた水はこの庭園の中心の水道を通っていて、水道の各所には大理石でできた6つの噴水が配置されています。距離のある広い運河から水平線上に水を引く技術はヴァンヴィテッリによる建築と水圧学のたまもので、彼の凄さが伺えます。
庭園はゆるやかな丘になっていて、上の方の噴水から王宮を見ると、きれいに延びた水道と王宮がなんともエレガントな空間を醸し出しています。
庭園を歩いて端まで行こうと思うと結構な距離なので、庭園入口から出ているシャトルバス(往復2.5ユーロ)や、時間制のレンタルサイクルなどをつかうのがおすすめです。シャトルバスは、入口と一番奥のディアーナとアクタイオーンの噴水を結ぶバスなので、途中下車できないことに注意です。


噴水(Fontana)

庭園に流れる水道には6つの噴水があり、見事な彫刻作品は庭園をより一層気品ある華やかな空間へと仕上げています。
王宮からむかってそれぞれ名前がついています。
- マルゲリータ噴水(Fontana Margherita)
- イルカの噴水(Fontana dei Dolfini)
- ケレスの噴水(Fontana di Cerere)
- アイオロスの噴水(Fontana di Eolo)
- ヴィーナスとアドーニスの噴水(Fontana di Venere e Adone)
- ディアーナとアクタイオーンの噴水(Fontana di Diana e Atteone)
ギリシャ神話やローマ神話の登場人物や話がモデルになっているものが多いです。
特に最後の噴水であるディアーナとアクタイオーンの噴水は人気のある噴水です。女神ディアーナの水浴びを見てしまったアクタイオーンが、女神の逆林にふれて鹿に姿を変えられてしまい、狂わせられた彼の猟犬に攻撃されている神話のシーンを再現しています。
イギリス式庭園(Giardino Inglese)

最後の噴水近くにある入口から、イギリス式庭園(Giardino Inglese)へも見学が可能です。
マリア・カロリーナの要望で、ルイジ・ヴァンヴィテッリの息子であるカルロ・ヴァンヴィテッリによってつくられたこの庭園は、200種以上の植物のある植物園でもあります。庭園内には美しい池や丘、橋、建物などがあり、自然の中にある王族にとっての憩いの場でした。
古代ローマ風にあえて劣化させたようにつくられたクリプトポルティコ(Criptoportico)はロマンチックで、その近くのよくある神話のシーンを再現したヴィーナスの水浴び(Bagno di Venere)も見どころ。
敷地内は23ヘクタール(東京ドーム約5個分)ととても広いので、ゆっくりと自然の中で過ごす時間があれば寄ってみるのがいいと思います。イギリス式庭園は王宮や王の庭園より早めに閉まりますので注意。


チケットの購入
宮殿のチケットは現地でも購入できますが、オンラインで買っておくとスムーズに入場することができます。カゼルタ宮殿+王の庭園+イギリス式庭園のチケットが18ユーロとなっています。
他にも、宮殿のみ(12ユーロ)、王の庭園+イギリス式庭園(9ユーロ)などのチケットもあるので、時間や行きたい場所を決めてチケットを買いましょう。
チケットは宮殿入口の左手にあるチケット売り場で買うか、カゼルタ宮殿の公式ページが推奨しているこちらのオンラインサイトで購入できます→Ticketone
見学にはオーディオガイドが便利ですが、残念ながら2025年現在、日本語のオーディオガイドはないため、イタリア語や英語などの言語での解説となります。
ちなみにイタリアでは毎月第一日曜日は、美術館や博物館の入場料が無料となります!ただ、逆に人が多く混雑することもしばしばあったり、一部分閉鎖になっているところもでてくるので、良かったり悪かったりといった感じでしょうか。
カゼルタ宮殿への行き方
カゼルタ宮殿へはナポリから電車でアクセスすることができます。
ナポリ中央駅(Napoli Centrale)から、ローカルな都市間を結ぶレジョナーレ(Regionale)と呼ばれるイタリアの普通電車に乗り、カゼルタ駅(Caserta)で下車します。イタリアあるあるですが、レジョナーレは遅延しやすいので余裕を持ったプランニングをおすすめします。
カゼルタ宮殿は駅のすぐ目の前にあるので、駅に着いたらカルロ王広場側(Piazza Carlo di Borbone)の出口からでて、宮殿へ向かいましょう。
電車のチケットは片道4ユーロ、ナポリ中央駅で往復で買っておくといいでしょう。1時間に3~4本くらいは出ていて、所要時間は約40分~50分といったところです。あらかじめトレニタリア社(Trenitalia)のホームページで時間を確認しておくといいと思います。
ナポリからカゼルタまで
鉄道会社: Trenitalia社
チケット: 駅構内またはオンライン
料金: 片道4ユーロ
所要時間: 約40~50分
運行間隔: 1時間に約3~4一本
カゼルタ宮殿は専用車&ガイド付きがおすすめ!
いかがだったでしょうか。ポンペイ遺跡やアマルフィ海岸などの、他のカンパニア州にある世界遺産に比べて知名度の劣るカゼルタ宮殿ですが、素晴らしい宮殿は一見の価値ありです。
カゼルタ宮殿へは上記で紹介したように、電車をつかった自力でアクセスすることも可能ですが、断然おすすめなのがベルトラ(Veltra)の企画する、ナポリからの専用車での送迎込みのカゼルタ宮殿ガイドツアーです。
ナポリ市内のホテルまで専用車で迎えにきてくれ、日本語を話せる現地ガイドがカゼルタ宮殿を案内してくれるツアー。日本語のオーディオガイドのないカゼルタ宮殿では、詳しい説明を聞きたいと思ったら、案内してくれるガイドは必須です。
帰りはもちろんナポリ市内まで専用車で送ってくれます。効率よくカゼルタ宮殿をまわるにはもってこいのベルトラのカゼルタ宮殿ガイドツアー、おすすめです!
カゼルタ宮殿(Reggia di Caserta)
住所: Piazza Carlo di Borbone, 81100 Caserta CE
開館時間: 08:30~19:00頃まで(季節や見学場所によって変更あり)
閉館日: 火曜日
料金: 18ユーロ(全ての見学スポット含む)
最寄り駅: カゼルタ駅(Caserta)から徒歩すぐ
公式サイト: https://reggiadicaserta.cultura.gov.it/