マレキアーロ
ポジリポエリアにある小さな港、そこに足を踏み入れると、そこだけ時がゆっくり流れているような不思議な感覚に陥ります。港に転がる大きな岩、ぷかぷか浮かぶ何隻かの船。
マレキアーロ(Marechiaro)は訪れる人の心を癒す、静かで美しい港です。ここ周辺はナポリの中でもトップクラスに高級な土地で、ナポリのセレブたちが住む高級住宅街でもあります。
また、老舗リストランテやトラットリアが数件立ち並び、夏には多くのセレブや著名人もマレキアーロからのパノラマを見ながらの食事を楽しみます。
マレキアーロの語源
Marechiaroという名前から、地元のナポリの人でさえmare(海)chiaro(澄んだ)とし、"澄きとおった海(Mare chiaro)"という意味だと勘違いしているケースがよくあります。実際にはラテン語のmare(海) planum(静かな)で、"静かな海(Mare planum)"が本来の意味です。
ナポリ弁では"p"の発音が"c"の発音に変わることがあり、"Mare planum"をナポリ弁で発音した"Mare chianu(マレキアーヌ)"が語源となっています。
マレキアーロの小窓
そんなマレキアーロを一躍有名にしたのがマレキアーロの港からみえる建物にあるFenestella(小窓)です。
ナポリ出身詩人サルヴァトーレ・ジャコモ(Salvatore di Giacomo)は1886年マレキアーロへの憧れを一つの詩に書き綴りました。驚くのはこの詩を書いた時点でサルヴァトーレは一度もマレキアーロを訪れたことがないということ。彼は老舗カフェテリア・ガンブリヌスの椅子に座り、カフェを飲みながらその詩"A Marechiare"を書いたといわれています。想像の中で描かれたのはマレキアーロにあるカーネーションが飾られた小窓から顔をのぞかせるカロリーナという名前の女の子でした。
そんなサルヴァトーレの書いた詩は、イタリア王室で音楽教師を務め、かのマルゲリータ女王に音楽を教えるほどの音楽家であったフランチェスコ・パオロ・トスティ(Francesco Paolo Tosti)の心に響き、彼はその詩に音楽をつけて歌として完成させました。
曲の完成から月日が経ち、サルヴァトーレがマレキアーロを訪れると、そこにはまさに彼が思い描いていたマレキアーロの小窓とそのそばにあるカーネーションを見つけました。また、何人かいるその建物の所有者の内の一人の妻の名はなんとカロリーナ!彼はマレキアーロを見ることなく、実際にあるマレキアーロの様子をはっきりと描写してしまったというのです。
そんな伝説的な話が本当か嘘かは置いておいて、サルヴァトーレ・ジャコモの歌詞とフランチェスコ・パオロ・トスティによる楽曲はナポリ民謡として大勢の人に愛され、世界的に有名になりました。
現在マレキアーロでは、その歌詞の一部が小窓の下に飾られいて、かの有名な窓を見ようと多くの人が訪れます。
霊の館
マレキアーロ近くの海岸には"Palazzo degli Spiriti(霊の館)"と呼ばれる古代ローマ時代紀元前1世紀ごろに元奴隷によって建てられたとする建物があります。
この近くの漁師によると、夜中に、漁をしているとこの建物から音楽や詩を読む声が聞こえてきて、それは魔術師ヴェルギリウスの魂ではないかと言われています。夏になるとこの建物は子どもたちの海への飛び込み台となり、建物から次々に海へダイブする子どもたちが見られます。
Marechiaro
住所: Marechiaro, 80123 Napoli NA
最寄り駅: メルジェッリーナ駅(Mergellina, linea2)からバス140番に乗車し、Posillipo-rione Primavera停留所で下車。そこから徒歩約7分。