南イタリア最大の都市として多くの観光客が訪れるナポリ。
知らない土地での移動はなんとも心細く、心配になってしまいますよね。ここではナポリの市内や近郊エリアへの移動に役立つナポリの交通情報について紹介してきます。
ナポリ市内にある交通手段
まずナポリの中心地自体はそこまで大きくないので、実は徒歩だけでも意外と主要な観光スポットをまわることができてしまいます。ただ、市内を効率よく観光するためにメトロやフニコラーレなどの交通手段をうまくつかうことで移動時間を短縮することができます。
それではナポリ市内の交通手段を見ていきましょう。
1メトロ Linea1
ナポリでおそらく一番使う頻度が高いのがanm社運営のメトロのLinea1(リネア ウノ)です。
ナポリ中央駅であるガリバルディ駅(Garibaldi)からトレド駅(Toledo)やダンテ広場駅(Dante)などの歴史地区を通り、ヴァンビテッリ駅(Vanvitelli)、メダッリャドーロ駅(Medaglia d'oro)などのヴァメロ地区、終点のピシーノラ駅(Piscinola)まで続きます。
最近は電車の到着時刻がホームに表示されるようになり、昔に比べてずいぶん利用しやすくなりました。運転間隔も10~15分に一本は電車がきます。
イタリアの場合、チケットは入口で刻印機に通して駅構内に入り、電車を降りて駅を出る際には特にどこも通さずに出ることができます。ただし、稀に出口付近でチケットを持っているかチェックが入るので、チケットは出口を出るまでは捨てずに持っておきましょう。
ナポリのLinea1の駅はそれぞれ特徴があることでも有名で、特にトレド駅はヨーロッパで最も美しい駅として賞も受賞しています。Linea1の駅を利用する際には駅構内のデザインも意識してみましょう。
チケットの購入場所
イタリア語で交通のチケット・切符をビリェット(biglietto)と言います。
よく使う単語なのでこれは覚えておいた方がいいと思います。Linea1のチケットはフニコラーレやバスと同じanm社が運営している共通のチケットです。
チケットの値段は市内の移動は距離に関わらず一律1.2ユーロ。コルサ シンゴラ(corsa singola)と呼ばれる一区間のチケットを購入しましょう。一日に4回以上バスやフニコラーレ、メトロLinea1を乗る場合には4.2ユーロの一日券(giornaliero)がお得になります。
チケットはタバッキ(Tabacchi)と呼ばれるたばこ屋やエディコラ(Edicola)と呼ばれる新聞などを販売しているキオスクで購入できます。
運行会社: anm社
料金: 一区間1.2ユーロ
一日券4.2ユーロ
チケット購入場所: タバッキ、駅構内など
運行間隔: 10~15分に一本
公式ホームページ: https://www.anm.it/index.php?option=com_frontpage&Itemid=1
2フニコラーレ
フニコラーレ(Funicolare)は19世紀後半にナポリ都市計画の一環としてできたケーブルカーで、ナポリの小高い丘になっているヴォメロ地区やポジリポ地区などへのアクセスにとても便利な移動手段です。運営はメトロやバスと同じanm社なので共通のチケットが使え、出発駅やタバッキで購入できます。
メトロやバスなどにない決定的なメリットは時間の正確さ!10分間隔で出発し、ほとんど遅れたりすることもありません。特にヴォメロ地区にアクセスしたい場合はこのフニコラーレを活用するとあっという間に着くことができます。
フニコラーレは全部で4路線あります。
ーFUNICOLARE MONTESANTO
モンテサント駅とモーガン駅を結ぶフニコラーレです。ピンニャセッカ市場やダンテ広場の近くにあるモンテサント駅からヴォメロの高台エリアへと繋がっています。モーガン広場からは景色のきれいなサンマルティーノ広場へ徒歩5分ほどで着けます。
ーFUNICOLARE CENTRALE
アウグステオ駅とフーガ広場駅を結ぶフニコラーレです。ナポリのメインショッピングストリートのトレド通りからヴォメロの中心地ヴァンヴィテッリ広場周辺にアクセスできます。
ーFUNICOLARE CHIAIA
パルコ マルゲリータ駅とチマローザ駅を結ぶフニコラーレです。地下鉄Linea2のアメデオ駅の近くにあるパルコ マルゲリータからヴォメロの中心地ヴァンヴィテッリ広場周辺にアクセスできます。
ーFUNICOLARE MERGELLINA
メルジェッリーナ駅からマンツォーニ駅を結ぶフニコラーレです。地下鉄Linea2のメルジェッリーナ駅から徒歩約5分ほどにあるフニコラーレのメルジェッリーナ駅からポジリポ地区にアクセスできます。サンタアントニオ駅からは絶景で有名なポジリポの丘へとアクセスできます。
運行会社: anm社
料金: 一区間1.2ユーロ
一日券4.2ユーロ
チケット購入場所: タバッキ、駅構内など
運行間隔: 10分に一本(30分に一本は直行)
運行時間: AM7:00ーPM22:00頃まで
公式ホームページ: https://www.anm.it/index.php?option=com_frontpage&Itemid=1
3メトロ Linea2
メトロのLinea2(リネア ドゥエ)はanm社の交通機関ではなく、Trenitaliaの所有になっているため注意が必要です。バスやフニコラーレ、Linea1の切符は使えませんので、各駅でTrenitaliaの切符を購入してください。
Line2はナポリを東西につないでいるのが特徴で、ナポリ中央駅のガリバルディ駅(Garibaldi)から考古学博物館のあるカヴール駅(Cavour)を通り、下町のメルカートのあるモンテサント駅(Montesanto)、キアイア地区のアメデオ駅(Amedeo)、港に近いメルジェッリーナ駅(Mergellina)、サッカースタジアム付近のカンピフレグレイ駅(Campiflegrei)などを通り、ポッツォーリ ソルファターラ駅(Pozzuoli Sorfatara)に到着します。
メトロとは言うものの、地下区間はアメデオ駅までで、メルジェッリーナ駅からポッツォーリ駅までは地上を走行します。
Linea2のポッツォーリ ソルファターラ駅は、港ではなく街の中に出るので用途によって使い分けましょう。(ポッツオーリの港へはクマーナ線をつかいます)
運行会社: Trenitalia社
料金: 1.3~2.4ユーロ(乗車区間による)
チケット購入場所: 駅構内
運行間隔: 10~20分に一本
公式ホームページ: https://www.trenitalia.com/it.html
4クマーナ線とチルクンフレグレア線
クマーナ線とチルクンフレグレア線はナポリとナポリの西側にある街をつなぐ路線で、EAV社が運営しています。始発駅はナポリのモンテサント(Montesanto)駅で、チケットはモンテサント駅の切符売り場で購入できます。詳しい運行時間や料金についてはEAV社のホームページにて確認しましょう。
ーCUMANA(クマーナ線)
クマーナ線は、スタジアムの最寄り駅であるモストラ駅(Mostra)やバールやレストランなどが並ぶポッツォーリのルンゴマーレの目の前にあるジェロロミーニ駅(Gerolomini)、ポッツォーリ港の最寄駅であるポッツォーリ駅(Pozzuoli)、海底都市で有名なバイアに近いルクリーノ駅(Lucrino)・フサロ駅(Fusaro)などの海岸線沿いを走り、終点トッレガヴェータ駅(Torregaveta)に到着します。
ーCIRCUMFLEGREA(チルクンフレグレア線)
チルクンフレグレア線は、内陸部でナポリ郊外の住宅街にあたるピアヌーラ(Pianura)駅やクアルト(Quarto)駅、ギリシャ移民によって繁栄した古代の街クーマの近くクーマ(Cuma)駅を通り、終点のトッレガヴェータ(Torregaveta)駅に到着します。
運行会社: EAV社
料金: 乗車区間による
チケット購入場所: 駅構内
運行間隔: 通勤時間帯は1時間に2~3本
公式ホームページ: https://www.eavsrl.it/web/
5ヴェズヴィオ周遊鉄道
ヴェズヴィオ周遊鉄道はチルクンヴェズヴィアーナ(Circumvesviana)とよばれ、ナポリとヴェズヴィオ山周辺にある街をつなぐ鉄道です。
以前はCircumvesviana社が運営していましたが、2012年にナポリのクマーナ線などを保有するSEPSAやベネヴェントやカゼルタなどの近郊都市への路線を保有するMCNEなどとともに、EAV社(Ente Autonomo Volturno)へ合併されました。
初めてヴェズヴィオ周遊鉄道を利用する際は、その落書きだらけの車体にびっくり!
お世辞にもきれいとはいえない落書きだらけの外装に、アコーディオンをひきながらチップをせびる老人、停車位置を通り越してしまってバックで戻る電車、大きな袋に商品を入れて物を売りに行くアフリカ人。なんともカオスなその風景は、最初こそ少し恐怖すら感じますが、これもナポリ。今の日本では感じられない、ある意味人間らしい、そんな鉄道です。ただし、本当に変な人も多いのでご注意を。
ポンペイ遺跡・ソレントへのアクセス
ヴェズヴィオ周遊鉄道にはいくつか路線がありますが、観光客がよく利用するのは"ナポリーソレント線"です。その他の路線は住民が使用するナポリへのアクセスのための電車といったイメージです。世界遺産に登録されているエルコラーノ遺跡やポンペイ遺跡、美しい海とレモンが有名なソレント半島へはこのソレント線を使います。
始発はナポリ中央駅ではなく、徒歩5分ほど離れたポルタノラーナ駅が始発となります。ポルタノラーナ駅から乗車すれば席に座れる可能性もグッと上がるので、時間がある方はこちらから乗車することをオススメします。
ソレントからはポジターノやヴィエトリ、アマルフィなどに代表されるアマルフィ海岸にある街へのバスも発着しています。
運行会社: EAV社
料金: ナポリーポンペイ(3ユーロ)
ナポリーソレント(4.2ユーロ)
チケット購入場所: 駅構内
路線: ソレント線(napoli-sorrento)
サルノ線(napoli-sarno)
ポミリャーノ線(napoli-pomigliano)
サンジョルジョ線(napoli-s.giorgio)
ポッジョマリーノ線(napoli-poggiomarino)
運行間隔: 通勤時間帯は1時間に2本程度
公式ホームページ: https://www.eavsrl.it/web/
6バス
ナポリ市内を走るバスはanm社によって運営されていて、オレンジ色の車体が目印です。(白と赤の車体もあり)バスの前後の電光掲示板には数字やアルファベットで路線や行先が記されています。
イタリア語でバスの事をアウトブス(autobus)やプルマン(pullman)といったりします。地方によってはプルマンは長距離バスに主に使われたりしますが、ナポリではアウトブスとプルマンはほぼ同意語として使われます。
降りる際に清算する日本とは違い、イタリアではバスに乗ったらまず車内にある刻印機にチケットを通して刻印し、降りる際には特に何も見せたり再度刻印する必要はなく、そのまま降りるだけです。降りたい場所をボタンで知らせるのは日本と同じです。
チケットはLinea1やフニコラーレと同じタバッキなどで買える1.2ユーロのチケットです。
バス移動は不便?
メトロなどではとまらないような場所に直接行けて便利な面もあるバス移動ですが、バス停の名前が通りの名前で分かりづらかったり、路線が多い(約50路線!)ので目的の路線を探すのが大変でもあります。
また、最近でこそバス停にバスの到着時間が表示される電光掲示板が設置されてきましたが、バスの中での車内アナウンスや停留所の表示などは未だにないことが多く、路線によっては渋滞が多い道を通るものもあり、時間通りにバスが来ることのほうが珍しいのも現実です。
混雑時にはスリの被害に確率も高いので、バスを利用する際には十分気をつけてください。
特殊なバス
ナポリ市内にはanm社以外にも青色のSITA社のバスも走っていますが、これはアマルフィやサレルノといったナポリ近郊へと向かう中長距離バスです。このバスのチケットはウニコ カンパニア(Unico Campania)というチケットが必要で、こちらも同じくタバッキなどで購入できます。
また、ナポリのカポディキーノ空港とナポリ中央駅間にはアリバスというバスが通っています。アリバスのチケットは5ユーロしますので注意しましょう。チケットはバス乗車時に支払うか、空港や中央駅近くのタバッキなどで購入できます。
バス会社: anm社
料金: 一区間1.2ユーロ
一日券4.2ユーロ
チケット購入場所: タバッキなど
運行間隔: 10~30分に一本
公式ホームページ: https://www.anm.it/index.php?option=com_frontpage&Itemid=1
7フェリー
港町であるナポリにはべべレッロ港(Molo Beverello)とマッサ港(Calata Porta di Massa)の2つの港があります。
2つの港はすぐ隣にあり、べべレッロ港からは高速船(aliscafo)、マッサ港からは比較的大型のフェリー(traghetto)が主にでます。どちらの港からもカプリやイスキアへの船がでていますが、高速船か、フェリーかによって出発する港が変わってきますので、注意が必要です。
その他にも、メルジェッリーナ港やポッツォーリ港からもフェリーが出ていますが、シーズン限定であったり、本数も少なかったりするので、べべレッロ港かマッサ港から乗船するのが無難です。
運行会社: SNAV社, caremar社, NLG社など
ナポリの港: べべレッロ港(Molo Beverello)
マッサ港(Calata Porta di Massa)
行先: カプリ、ソレント、イスキア、パレルモなど
料金比較サイト: https://www.traghettilines.it/
8タクシー
人口が多く、観光客も近年ますます増えているナポリですが、そのわりに公共交通機関はまだそこまで快適とはいえず、メトロやバスがいつも混雑していることが多いです。それを考えるとタクシーをつかっての市内の移動はとても楽です。
また、荷物を気にする必要もなく、道に迷う心配もないのも大きなメリットのひとつです。
ぼったくりに注意しよう!
たくさんのメリットがありますが、ネックなのは料金。タクシーにぼったくられた、なんて話も耳にします。
実はその対策としてナポリ市が公表しているタクシーの料金表をみせるという手段があります。ナポリ市ではこうした旅行者へのぼったくりを防ぐため、渋滞が多い街の事情を考慮してタクシーの料金を定額で定めているのです。これを印刷して、タクシー運転手にみせれば彼らもごまかせません。(コチラのナポリ市公式ホームページからダウンロードできます。)
注意点としてはメーターが動きだしてからでは遅く、発車する前に定額料金でお願いしますと伝えること。料金表などを見せながらイタリア語で「タリッフェ・プレデテルミナーテ・ペルファヴォーレ(Tariffe predeterminate per favore)」と伝えましょう。
例)ナポリ空港ーナポリ中央駅(18ユーロ)
ナポリ空港ーサンカルロ劇場(21ユーロ)
ナポリ中央駅ーサンカルロ劇場(13ユーロ)
ナポリ中央駅ーサンマルティーノ修道院(16ユーロ)
ナポリでの交通はおおらかな気持ちで
ナポリを旅行していると、日本では考えられないようなサービスを体験します。バスが時間になっても全然来なかったり、停車駅のアナウンスがなかったり、ストライキで動かなかったり。。。あらためて日本の交通機関の素晴らしさを実感します。
ただ裏を返せば、便利さだけにとらわれない生活を営んでいるともいえます。バスや電車が時間通りに動かなくても、それをみんな知っているので怒るというより、あきれてみんなで自虐ネタにして笑うくらいのものです。
日本だったら2~3分の遅刻でも必ずアナウンスが入ります。日本のサービスの高さを感じると同時に、どこかせわしさや窮屈さを感じてしまいます。数分の遅れでアナウンスが入るのは、それに対して実際に苦情をいる客がいるということでもあるでしょう。
近年の先進国では全ての分野において便利さを追求することが最優先され、それとともに失ってきたもの、破壊されていったものも数多くあります。
そんな風に考えると、ちょっと不便な交通事情も「まあ、こんなものかな」と寛容になれる気がします。