イタリアンレストランの名前の前によく「トラットリア(Trattoria)」や「オステリア(Osteria)」といった単語がついているのを目にしますが、どういった意味かご存知でしょうか。
これらの単語はレストランの形態を表す単語です。これらの単語の意味を知ることで、そのお店のおおまかなコンセプトや、扱っている料理の種類などもイメージすることができます。色々なイタリアンレストランの形態の種類や特徴についてみていきましょう!
トラットリア Trattoria
イタリアにおける一般的なレストラン形態ともいえるのがトラットリア。
比較的安価な値段で気軽にイタリア料理を楽しむことができるのがトラットリアの特徴です。サービスも気さくでフランクなところが多く、イタリアらしい陽気なサービスを受けられるでしょう。
また、地域独特の伝統的なメニューを扱っていることが多く、その地域のトラットリアにあるメニューはどこも似ていることがほとんどです。その分そのお店の特徴がはっきりと出るので、何店舗か違うトラットリアを食べ歩いて自分のお気に入りのお店を見つけるのも楽しいです。
リストランテ Ristorante
トラットリアよりも一段階高級なお店にあたるリストランテ。
イタリアでリストランテというと、しっかりとネクタイを締めたホールスタッフが料理の説明をしてくれたり、伝統的な料理ももちろんですが、ひと手間アレンジを加えた料理やクリエイティブな料理も楽しめます。
リストランテと聞くと気になるのはドレスコードですが、星付きレストランなどでなければ特にドレスコードは必要ないので、気にしなくて大丈夫です。また最近では、リストランテとトラットリアの区別も薄れてきている傾向にあり、高級なトラットリアもあれば、逆にピッツァを提供するリストランテもあります。
ピッツェリア Pizzeria
安くてお腹いっぱいになれるといえばやっぱりピッツェリアが一番。
特に南イタリアのナポリには、歩くたびにピッツェリアがあるといっても過言ではないほどたくさんのピッツェリアがあります。ナポリにおけるピッツェリアはとても重要で、庶民の生活に欠かせないものなのです。
素晴らしい材料と技術で焼かれたピッツァがリーズナブルな値段で食べられるピッツァリアは、家族連れ、友人同士や恋人とのデートなど様々なシーンで利用されます。また、400℃の高温が出る薪窯はピッツェリアでないと難しいことからも、定番の外食料理といったイメージです。
日本ではピッツァというとみんなで取り分けて食べる食べ方が一般的ですが、ナポリでは一人一枚自分の好きなピッツァを頼むのが常識です。日本でラーメンやおそばを取り分けたりしないですよね、そんな感覚に似ていると思います。
オステリア Osteria
もともとはラテン語の"Hospite"に由来するオステリア。
ワインやおつまみ、家庭料理をふるまうお店で、宿泊施設も兼ねていたとされています。ポンペイ遺跡にはこのオステリアの形態に似た"Thermopolium"と呼ばれるお店の跡が残されています。
現在では家族経営のアットホームなトラットリアといったイメージが強いです。オステリアでは特にワインに力を入れているところも多く、地元でつくられたワインや自然派ワインを中心に店内にはズラッとワインが並んでいます。経験上なんとなくですが、オステリアと名前が付くとなぜか美味しそうなイメージがしまうんですよね。
似たような形態にタベルナ(Taverna)、ロカンダ(Locanda)、ベットラ(Bettola)などがあります。
エノテカ Enoteca
ワインの専門店であるエノテカ。
エノテカには地産のワインはもちろんイタリア各州のワインが揃っていて、店内でグラスワインを楽しめたり、お気に入りのワインを購入できたりとワイン好きにはたまらないお店です。基本的にリーズナブルな価格設定のところが多いです。
オステリアと違ってさらにワインに特化しているため、食事はサラミやオリーブ、チーズなどのおつまみ程度がほとんどです。またワイン販売をしている点でも小売店に近い形態といえそうです。
ヴィネリア(Vineria)ともよばれます。
ターヴォラ カルダ (Tavola calda)
ターヴォラ カルダは現代風にいうとファストフード店と同じ感覚です。
仕事の合間などににパッと昼食をとれるようなお店で、すでに調理されたパスタやメイン料理、コントルノなどがショーケースに並んでいて、好きなものを注文します。
今でこそ大手ファストフード店に押されて消えつつありますが、個人的にはファストフード店でありながらしっかりとした手作りのイタリア料理が味わえるターヴォラ カルダはなくなってほしくない形態です。
その他専門店
イタリアには上記以外にも、多くの専門店が存在します。
パニーノを専門にしたパニノテカ(Paninoteca)、イタリア惣菜や簡単なパスタやピッツァなどを売るロスティッチェリア(Rosticceria)、スパゲッティに特化したスパゲッテリア(Spaghetteria)、米を使ったリゾットを中心としたリゾッテリア(Risotteria)、炭火焼専門のブラチェリア(Braceria)、内臓料理の専門店トリッペリア(Tripperia)など挙げればキリがないほどです。
もともとイタリアではこうしたレストラン形態がありましたが、最近ではより一層レストラン形態の専門化が進んでいて、広く浅くから、狭く深くというフェーズに入ってきています。
また、こだわった食材を使うことによって差別化を図る動きも大きくなり、Gourmet(グルメ)と呼ばれる一段高いレベルの料理を提供しようとするお店もここ数年で一気に増加しています。
イタリアでのお店探しの際には看板にある"レストラン形態"に注目してみると、そのお店のコンセプトやスタイルが見えてくるので、参考にしてみてください。