チーズやバターの生産はイタリアでも北部の方が盛んなイメージがありますが、南イタリアでもモッツァレラチーズをはじめとする様々なチーズが生産されています。
プロヴォローネ デル モナコもそんなカンパニア州を代表するチーズのひとつです。
プロヴォローネ デル モナコとは
プロヴォローネ デル モナコはソレント半島周辺の地域を中心につくられるセミハードタイプのチーズで、モッツァレラチーズと同じパスタ・フィラータ製法を用いてつくられています。
名前のプロヴォローネ デル モナコとは、直訳すると「修道院のプロヴォローネ」という意味になります。ソレント半島付近でつくられていたプロヴォローネは冬の夜の寒い中、売りに出すため船でナポリの港まで運ばれていました。寒さをしのぐために彼らがまとっていたマントが修道服に似ていたため、ナポリの人たちの間で「修道院のプロヴォローネ」と呼ばれるようになったといいます。
プロヴォローネ デル モナコができるまで
プロヴォローネ デル モナコはカンパニア州の特産品であるモッツァレラチーズと同じパスタ・フィラータ製法でつくられるため、その製造工程もとても似ています。
まず朝とれたての生乳を加熱し、山羊のレンネットを加えて凝乳させます。凝乳によって取り出されたカードは細かく切り出され、熱湯につけながらパスタ・フィラータ製法の肝でもあるでフィラトゥーラ(filatura)とよばれる作業に移ります。男性ふたりがかりでのばし、ねじり、折りたたみ、またのばすという動作を繰り返すことで、余分な水分を取り除きながら、カードに必要な弾力とやわらかさ、繊維質を与えます。
その後、プロヴォローネ デル モナコ特有の長いメロンのような形に成形され、水の中でその形を維持、サラモイア(塩水)に一定時間漬けられ、乾燥・熟成の工程へと進みます。
プロヴォローネ デル モナコの特徴
1. 良質なミルク
普通のプロヴォローネとの差を分けるのが原料となるミルクの質です。
プロヴォローネ デル モナコの生産にはソレント半島近くにあるアジェーロラという土地で育てられたアジェロレーゼ種の牛のミルクを使用することが定められていて(全体量の少なくとも20%)、アジェロレーゼ種のミルクは搾乳できる量が少ない反面、最高級のミルクとして知られています。
2. 熟成された香りとコク
プロヴォローネ デル モナコは他のプロヴォローネやカチョカヴァッロに比べて比較的長い熟成期間を必要とします。最低でも6か月、最長で1年から1年半にも及ぶ熟成期間を経て、チーズには芳醇な香りとコクが生まれます。
6か月の熟成期間のものが一番食べやすく、最もポピュラーなものですが、1年を超えるものはピリッとした辛みが加わりより一層風味が増します。
3. 品質を守るための基準
DOP(原産地呼称保護)にも指定されているプロヴォローネ デル モナコはそれを名乗るために細かく条件が定められています。
・メロンをのばしたような形で、重量は2.5kg~8kg。
・茶色味がかった黄色で、程よく滑らかな薄い外皮で覆われている。
・ラフィアの紐によって少なくとも6面できるように縛られている。
・少なくとも6か月間の熟成期間。
・100Lの生乳に対して最高で9kgの生産量。
などなど。
プロヴォローネ デル モナコの食べ方
プロヴォローネ デル モナコ本来の味を楽しむには、そのまま切ってワインのおつまみとして食べると、そのコクとピリッとした舌触りを存分に味わえます。
また、加熱することでのびがでて、香りが増すことでも知られています。厚く切ったパンに乗せてトーストすればそれだけで贅沢な前菜になりますし、ナポリの伝統料理であるパスタ エ パターテやアマルフィの名物パスタ、スパゲッティ・アッラ・ネラーノ(Spaghetti alla nerano)などにも使われます。
日本では手に入りにくい食材ではありますが、チーズ専門店などには取り扱っているお店もあるので探してみてはいかがでしょうか。ナポリにお越しの際はぜひサラミやチーズを扱うサルメリア(Salumeria)で買ってみてください!100gなどの少量でも売ってくれるので安心してくださいね!