イタリアの「パスクワ」ってどんな祝日?従来の過ごし方と伝統料理について -Pasqua-

カトリック教徒が多いイタリアにおいて、クリスマスに並んでの大きなイベントがパスクワ(Pasqua)とよばれる祝日です。
そんなイタリア人にとって大事なパスクワの意味や過ごし方、伝統料理にについてみていきましょう!
パスクワって何?

パスクワとはイースター(復活祭)のことで、イエスが十字架にかかり死に、三日目によみがえったことを記念する日です。
キリスト教の行事としてはクリスマスが一番に思い浮かぶと思いますが、実際にはイエスが復活したイースターこそ、キリスト教にとって最も大事な行事にあたります。
イタリア語でイースターのことをパスクワ(Pasqua)といい、モーセがエジプトからヘブル人を連れ出す際の過越を記念した"過越の祭り"を意味するヘブル語のペサハ(Pesach)からきています。
過越の祭りとは?
旧約聖書によると、エジプトの王パロはモーセら位の低かったヘブル人がエジプトから出ることを断じて許しませんでした。そのため神はモーセを通していくつもの奇蹟をおこし、パロにモーセらがエジプトから出られるようにはたらきかけます。
その最後として、神はエジプトにいるすべての人や家畜の初子をうつことを告げられます。ただしエジプト人とヘブル人を区別するため、子羊を生贄としてほふり、その血を家の入口の2本の門柱とかもいにつけることで、そのしるしがある家を神は過ぎ越されました。その結果、ヘブル人の人や家畜の初子は守られたのです。
この過越はその後も代々神の救いのわざを記念する日として祝われ、過越の日の次の日から1週間は過越の祭りとして祝われました。
イエスの十字架と過越の祭りの関係
イエスが十字架につけられるため罪人として捕らえられたのは過越の祭りの準備期間、十字架にかかったのはちょうどその過越の日でした。
これには、旧約聖書で語られているエジプト脱出の際の「子羊の生贄」がイエスであり、人々の罪の身代わりとなったという意味があるのです。
このように復活祭と過越の祭りは切っても切れない、密接な関係にあるんです。
パスクワはいつ?
パスクワは年によって日にちが変わる移動祝日です。
基本的に"春分の日の後に来る最初の満月の次の日曜日"とされています。
もともとが太陰暦で決められた日にのために、現在でも日にちが変わってくるわけです。ちなみに教会歴では計算上の理由で3月21日を春分の日として制定しています。
イースターとウサギと卵の関係性って?

イースターのシンボル的な存在として知られているのがウサギと卵です。
卵は新たな生命、ウサギはその繁栄を意味しています。卵は昔からイースターに欠かせないシンボルのひとつでしたが、ウサギは比較的歴史が新しく、16世紀のドイツの教会を中心に広まっていったとされています。
イタリアではイースターの時期になると大きなチョコレートでできたイースターエッグ(Uovo di Pasqua)がスーパーなどに並びます。チョコエッグの中にはプレゼントが入っているものもあり、子供たちにも大人気です。
イースターにちなんだイタリア料理とお菓子
イタリアはカトリックの国なので、イースターはイタリア全土で盛大に祝われます。
食べられる料理も伝統的に決まっていて、地域ごとに特色があります。イースターによく食べられる料理やお菓子、特にカンパニア州の"パスクワ料理"をご紹介します。
ハムの盛り合わせ・フェッラータ(Fellata)

ナポリのパスクワは生ハムやサラミなどのハムの盛り合わせではじまります。
フェッラータ(Fellata)とはナポリの方言で一切れを表す、フェッラ(Fella)からきています。生ハム、ナポリ産サラミ、辛口サラメピカンテなどの定番に加え、豚の背中部分にあたるコッパとよばれるサラミは欠かせません。
ハム類と一緒に塩気の効いたリコッタチーズや、モッツァレラチーズ、ゆで卵なんかも食べられます。
カサティエッロ(Casatiello)
ナポリのパスクワに欠かせないものがこのカサティエッロです。
日本語で説明すると「ハムやサラミ、ゆで卵のケーキ型パン」といったところでしょうか、実際そんなフワッとしたやさしいものではありません。
薄く広げたパン生地(ピッツァ生地を使うことも多い)にハム、サラミ、ゆで卵、プロヴォローネ、チコリなどの具、たっぷりの黒コショウをふって巻いていきます。それを輪のようにつなげ、卵をまるごと生地にのせ焼き上げます。
生地に練りこまれたラードの香ばしさとたっぷり入った具はズッシリとした重さがあり、かなりのボリュームです。
焼きあがったカサティエッロはケーキのように切り分けて食べます。トルタノ(Tortano)ともよばれます。
ミネストラ・マリタータ(Minestra Maritata)

ナポリの祝い事に欠かせないのがこのミネストラ・マリタータです。
特に冬のイベントには必ずといっていいほど登場します。スカローラ、チコリ、ブロッコレッティなどのたっぷりの青野菜と牛スネだどの筋っぽい部位をやわらかく煮込んだ栄養満点のスープです。
Maritataとはイタリア語で「結婚した」といった意味があり、牛肉と野菜の旨味がスープによって絶妙に一体化されることからこの名がついてるといわれています。
どちらかという家庭料理ですが、もしイースターの時期にトラットリアなどのメニューで見かけた場合は迷わず注文してください!想像こえてきます。筆者の大好きなナポリ料理のうちの一つです。
子羊料理(Agnello)

上記したように、過越の祭りでは子羊が生贄としてほふられ、その肉は家族内でその日の内に食べられました。今でもイースターの象徴である子羊はイースターの食卓になくてはならないメニューです。
伝統的にはエンドウ豆かじゃがいもと一緒に煮込むのが定番ですが、シンプルにグリルでも食べられます。
パスティエラ(Pastiera)

ナポリのイースターの大定番ドルチェがパスティエラです。
この時期には家庭をはじめ、お菓子屋さんのパスティッチェリア、スーパーなどいたるところでパスティエラをみることができます。パスティエラは煮込んだ麦とリコッタチーズ、オレンジなどの果物の砂糖漬けを使ったしっとり、どっしりとした焼き菓子です。
麦の何とも言えない食感とオレンジの花からとったエッセンスによる香りが特徴で、好き嫌いも人によって分かれるかもしれません。私のイタリア人の友人でもあまり好きでない人も結構いますし、逆に好きな人はものすごく好き!というパターンが多いです。
パスティエーラは日持ちもするので、復活祭前後につくられてこの期間の間はいつでも食べられます。
復活祭の翌日 パスクエッタ
イースターの次の日をイースターマンデー、イタリア語ではパスクエッタ(Pasquetta)といいます。
この日はイエスの復活をマグダラのマリアらが天使から告げられたことを祝う、喜ばしい祝日です。イタリアでもこの日は祝日で仕事も休みになり、家族や友だちと外にでかけます。伝統的にはピクニックをすることが多く、ナポリのヴィルジリアーノ公園にはたくさんの家族連れがピクニックを楽しむ姿をみることができます。
また、夕方から夜にかけて野外ライブやディスコテカなどの大きなイベントも開催され、イタリア中幸せなムードに包まれます。